キミ サクラチルコトナカレ!!

http://d.hatena.ne.jp/KenAkamatsu/20101110/p1

こんなところから本命がやってくるとは意外すぎる。
理解している人は理解しているが、絶版本というのは「電子化せざるを得ない」。なぜなら従来の出版の仕組みでは出版社は在庫の問題、本屋は棚の問題、という物理的および付随する経済的問題で、もはや市場に流すことが非常に難しいからだ。
さて出版社は電子化する以上、利益が出なくてはならない。つまり基本「売れないから絶版」になった本を、出版社が電子化することは「なんらかの特殊な意義」がない限りありえない。あなたが出版社社長だったら、下手すれば人件費だけで数千万かかってしまう事業に売れない商材を突っ込むだろうか。
だが「なんらかの特殊な意義」があれば話は別だとは言える。それは事業としてアーカイブを行うことで、実は本当のところ出版の意義の根底にはそれがあるはずなのだが、大抵の出版社は経済的合理性から綺麗さっぱりこれを忘れ去り、ずんどこ売れない本や売れない作家の出版をしなくなってしまう。広告やら営業やらしてるかすら大変怪しいのだが。
で、絶版になった本というのは「市場的に無価値」となってしまう。このあたり佐藤秀峰氏も発言されていたと思うけれど、「ブラックジャックによろしく」すらもうBOOKOFFで買い取ってもらえないという恐ろしい現実がある。つまり絶版本というのはもはや市場経済から外れてしまっているのだ。そこに経済を持ち込むのはアホのすることである。
では経済をしなければどうか。というのが赤松健氏のやることなのだ。なんだか世の中には「広告モデルはすでに破綻している」とかしたり顔でぬかす方もいてアゴが外れそうになるが、これはそんなモデルではない。単に広告を入れたことによる「正当性」を獲得することが重要なのだ。なにしろ広告収入は興行主には入らないし、またこの試みに乗る著作者も広告収入を期待しているわけではないだろう。なにしろ出版社は再販してくれないし、中古市場で回ったって金が入るわけがない。「市場的に無価値」になってしまったものであることは著作者だってある程度納得している。むしろ再度世の中に発表できることのほうが価値があり、それによって入る金額の多寡は余録的なものだと思われる。まあサイトではやたらに金の話をしているけれど、これは今募集する絶版本ではなく、未来の新作での電子出版を睨んでるんだろうなあ。
最大の懸念は著作権者との連絡と権利関係の把握にあるのだが、おそらく始まる前に潰れた絶版堂はこのあたりを軽く考えていたのだろう。しかし赤松健氏にそんな穴があるとは考えづらい。周到な準備をして立ち上げてきただろう。今後に期待したい、というか本格運営が始まったら、保有している絶版漫画を片端からスキャンして叩き込んでやるのでよろしくお願いします。