サバイバル・ホスピタル

先日テレ朝でやってた医療崩壊の番組中、原因にあるものの一つとして「IT化による医療事務の増加」というのがサラリとナレーションで流れたのでそりゃすげーなと思ってちょっと調べてみた。IT化したら手間が増えた上医療崩壊とはどんなんやねん。
電子カルテの導入は事務作業の軽減化・標準化を目指して当初は各病院独自の取り組みとして始まっている。とんでもなく多岐に亘る病院の業務を電子化するのは、並大抵の作業ではないだろう。しかしこれが運用できれば、受付から各科への通達、調薬、投薬、検査施設の予約、人員配置、在庫管理等々、一元的管理が可能になる。カルテの電子化は読み違えなどが無くなるし、標準化されれば病院間でのデータ共有もできる、まさに夢のシステムなわけだ。その後厚生省主導による電子カルテ普及が推進されてきた。
ところが色々調べるに、電子化で大成功!とまでは行っていないことは確かなようだ。もちろん大抵の部分で電子化は成功していて、特に最も肝要と思われる各種管理機能ではそのパワーを発揮しており、パーコードやICタグを使ったチェック機能は人為的ミスを大きく低減させている。また各部署への通達や伝票作成などでも合理化がうまく働いていると思われる。ただ、チェックを明示的に行わなければならないという点では煩雑になったと思うこともあるだろう。しかしそれは「人間を信用しない」ことによって正確さを上げるためのトレードオフなので仕方ない。
ではなにが問題なのか? いろいろと見てみると、端的に言って「入力がタルい」ことにあるようだ。医療の現場はほとんど戦場に近い。ミッションクリティカルな上にスピードが重要になってくるわけだ。ここで各種入力に手間がかかるようでは、「ガンダムが僕の反応に追いつかなかったんだ」となってしまう。反応といってもボタンをポチっとしたら返ってくるまでのレスポンスタイムのことではなく、訓練を積んだ人間はたいがいコマンドセットを持っていて、特定の状況については反射的にその後の対応の複合的な手続きがすぐ行えるようになっているので、入力にはその要素が求められるわけだが、先日近くの総合病院に行ったときの電子カルテの入力を見ていたところ、もーいろんなところポチポチクリックしーの選択しーのキー入力しーのしてて、こりゃあかんわとさすがに思った。まあ自分は特にUserInterfaceについてうるさいというか、とにかくめんどくさがりなので、コンピュータ化で手間が増えるとか聞くとアホかと思う。そこは技術で乗り越えなければならない問題であり、もっとアクティブに医者の意思をサポートするUIが必要だと切に思った次第。医者はこの要因によるこの症状ならこれが基本、場合によってあれを省いてあれは追加する、みたいなのがスパっとくるのを希望してると思うぞ。
とはいえ前出の病院でも、電子カルテ入力後の検査や投薬、処方の流れは非常にスムーズで、どの部署へも書類を持って歩く人はいない(もちろん天井を文書箱が走ってもいない)。この状態をもって医療崩壊の一因とか言われてはちょっと失礼だと思う。それほどの問題であるなら、それこそ医療チームに意見を聞き、システムを改修したほうがいい。金で解決できるレベルの問題なのだから、もっと巨大な問題である医療崩壊を食い止めたいならすぐにやるべきだろう。あと医者や看護士が病院を移転することは珍しくないので、UIに関して標準化を積極的に進めるべきだろう。このへんは学会もしくは国レベルで有識者と現場の人間での協議がもちろん必要だ。
まあほとんど自分の想像に過ぎないんで突っ込みどころ満載とは思うが、とりあえずほんとにIT化で医療事務増加してるのかのご意見は募集したいところ。